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第13回 『プライベート・エクイティの動向とパフォーマンス測定②~』

PwCあらた有限責任監査法人
パートナー、資産運用インダストリーリーダー
清水 毅

第三金融部(資産運用)シニアマネージャー
秋山 潤一郎

2019年2月13日

目次
1. はじめに
2. PEの動向
3. PEのパフォーマンス実績
4. 英国におけるPEのパフォーマンス測定
5. GIPSで定められているPEのパフォーマンス測定方法
6. 日本におけるPEの評価に関する会計基準
7. 日本におけるパフォーマンス測定の課題
8. まとめ

 前回は、世界におけるPE運用資産残高推移の実績と予測、およびPEのパフォーマンス実績について概説した。連載第2回目となる本稿では、従前よりPEのパフォーマンス測定・報告を行っている英国プライベートエクイティ・ベンチャーキャピタル協会(The British Private Equity and Venture Capital Association、以下「BVCA」)のレポート内容および測定手法を中心に、グローバルにおけるPEのパフォーマンス測定に関する動向について触れる。

4) 英国におけるPEのパフォーマンス測定

(1) BVCAによるパフォーマンス測定の概要

 英国のPEおよびベンチャーキャピタル(以下「VC」)業界団体であるBVCAは、同協会に所属するPEファンド運用会社が1980年代より運用するPEおよびVCファンドのパフォーマンスを集計し、業界全体のパフォーマンスを毎年「BVCA Private Equity and Venture Capital Performance Measurement Survey」(以下「BVCA報告」)という報告書にて開示している。
 2017年のBVCA報告では、86社のBVCA会員会社(629ファンド)が調査に参加した。BVCA会員会社のうち大多数が参加しており、BVCA報告は英国のPEファンド業界全体の状況を表しているといえる。
 パフォーマンスの集計および分析については、PwCおよびCapital Dynamics社が協力している。
 図表4は、2017年のBVCA報告における、対象ファンドの期間別・カテゴリー別年率リターンのサマリーである。BVCA報告では、PEファンドを①ベンチャー、②小規模マネジメントバイアウト(以下「MBO」)(投資額10百万英国ポンド未満)、③中規模MBO(10百万-100百万英国ポンド)、④大規模MBO(100百万英国ポンド超)の4つのカテゴリーに分けて、1年、3年、5年、10年の年率パフォーマンスを開示している。同様に、各PEファンドの活動を、(a) 英国および(b) 英国以外、また(A)テクノロジーおよび(B)テクノロジー以外に分類して開示している。

<図表4>BVCA報告に基づくPEファンドの期間別・カテゴリー別年率リターン
(単位:%)

<図表4>BVCA報告に基づくPEファンドの期間別・カテゴリー別年率リターン

また、図表5は、同じく2017年のBVCA報告における、ヴィンテージ(ファンド開始年)別年率リターンのサマリーである。記載の通り、BVCA報告では、ヴィンテージごとに集計したパフォーマンスも開示している。

<図表5>BVCA報告に基づくPEファンドのヴィンテージ別年率リターン
(単位:%)

<図表5>BVCA報告に基づくPEファンドのヴィンテージ別年率リターン

 さらに、図表6の通り、BVCA報告では、上場株式のパフォーマンスとPE投資のパフォーマンスを比較するために、FTSE All-Share Index、FTSE100、250、350 Indexとそれぞれリターンの比較を行っている。これによると、2017年のBVCA報告では、PEファンドのパフォーマンスは、1年、3年、5年、10年のいずれの期間においても、上記のFTSEインデックスをアウトパフォームしていることが分かる。

<図表6>BVCA報告に基づくPEファンドとFTSEインデックスの年率リターン比較
(単位:%)

<図表6>BVCA報告に基づくPEファンドとFTSEインデックスの年率リターン比較

 上記は1年、3年、5年、10年の期間ごとのパフォーマンスであるが、ファンド開始来のパフォーマンス(Since Inception Internal Rate of Return、SI-IRR)についても、カテゴリー別およびヴィンテージ別の開示がなされている。
なお、BVCA報告は毎年サマリーレポートがまず発行され、その後フルレポートが発行されるが、フルレポートでは、中央値や四分位数・十分位数等の散らばりに関する情報や、実現倍率(DPI)・投資倍率(TVPI)も開示されている。

(2) BVCAによるパフォーマンス測定方法
 BVCA報告におけるパフォーマンス測定においては、内部収益率法(以下「IRR法」)が採用されている。該当する期間のキャッシュフロー情報と、期首・期末のファンド純資産の公正価値評価額を各PEファンドから入手して、集計・計算をしている。当該IRR法に基づくリターンは、投資家に対するリターンで発生する費用を控除した後のリターンである。また、各時点のファンド純資産の公正価値評価額からは、成功報酬の見込額が控除されている。
各ファンドが保有する資産の評価については、公正価値が使用されるが、当該公正価値は、BVCA報告によれば、原則として、International Private Equity and Venture Capital Guidelines(以下「IPEVガイドライン」)に基づいて測定されている。IPEVガイドラインについては本稿第6項で概説する。

5) GIPSで定められているPEのパフォーマンス測定方法

 グローバル投資パフォーマンス基準(Global Investment Performance Standards、以下「GIPS」)は、PEを含む資産運用会社による見込・既存顧客に対する投資パフォーマンス実績の公正な表示と完全な開示を確保するために定められた、グローバルにおいて共通の自主基準である。GIPS基準は、世界各国のGIPSカントリー・スポンサーの参加を得て、CFA協会傘下のGIPS Executive Committee (GIPS EC) により策定および運営されている。日本では、日本証券アナリスト協会がGIPSカントリー・スポンサーになっている。
 GIPSの第Ⅰ章7.には、PEのパフォーマンス計算に関する規定があり、以下は、PEに関する主たる規定である。

 


● PE投資は、公正価値によって評価する。
● PEは少なくとも年次ベースで評価する。
● PEは、年率換算した開始来内部収益率(SI-IRR)を計算する。
● SI-IRRは、日次キャッシュフローを使用して計算する。
● リターンは、当該期間にかかる実際の取引費用を控除して計算する。
● フィー控除後リターンは、成功報酬を含む運用報酬の控除後で計算する。


 

BVCA報告におけるパフォーマンスも、基本的には、上記GIPSの規定に準じて測定されていると考えられる。ただし、上場株のパフォーマンスとの期間比較を可能するため、SI-IRRに加え、期間ごとのパフォーマンスも測定・開示されている。
なお、GIPSは現在改訂作業が行われており、2018年8月31日にGIPS基準2020年版公開草案がCFA協会から公表された。GIPS基準2020年版は2020年1月1日に発効し、2020年12月31日以降に終了する年度のパフォーマンス報告から新基準への準拠が必要となる予定である。
 当公開草案によると、一定の条件を満たすファンド(通常PEファンドを含む)については、継続適用を前提として時間加重収益率と金額加重収益率(IRRを含む)の選択を可能とすることが提案されている。また、非公開市場投資については少なくとも12カ月ごとに、外部評価ないし外部評価レビューを受けるか、財務諸表監査の対象に含めなければならないことが提案されている。

 次回は、日本においてPEファンドのパフォーマンス測定に取組む際に留意すべき会計基準や、その他克服すべき課題について概説する。

***
『プライベート・エクイティの動向とパフォーマンス測定』のコラムは計3回の連載となります。

著者プロフィール 
清水 毅(しみず・たけし)
PwCあらた有限責任監査法人パートナー、資産運用インダストリーリーダー

秋山 潤一郎(あきやま・じゅんいちろう)
PwCあらた有限責任監査法人第三金融部(資産運用)シニアマネージャー

清水 毅(しみず・たけし)
PwCあらた有限責任監査法人パートナー、資産運用インダストリーリーダー。
30年以上の間、東京およびニューヨークにおいて、ファンドおよび運用会社を中心とする金融機関に対して、監査およびアドバイザリー業務を提供。日本証券業協会・投資信託協会・日本投資顧問業協会により設置された「資産運用等に関するワーキング・グループ」委員を務める。主たる著書として、「投資信託の計理と決算」(中央経済社・共著)、「不動産投信の会計と税務」(中央経済社・共著)、「集団投資スキームの会計と税務」(中央経済社・共著)等。公認会計士、日本証券アナリスト協会 検定会員。

秋山 潤一郎(あきやま・じゅんいちろう)
PwCあらた有限責任監査法人第三金融部(資産運用)シニアマネージャー。
約20年の間、東京および上海において金融機関、その他幅広い業種の会社に対して、監査およびアドバイザリー業務を提供。プライベート・エクイティ・ファンドおよびその運用会社の監査、ならびにプライベート・エクイティ業界に対するアドバイザリー業務を数多く手がける。公認会計士。

   

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