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第12回 『プライベート・エクイティの動向とパフォーマンス測定①~』

PwCあらた有限責任監査法人
パートナー、資産運用インダストリーリーダー
清水 毅

第三金融部(資産運用)シニアマネージャー
秋山 潤一郎

2018年12月19日

目次
1. はじめに
2. PEの動向
3. PEのパフォーマンス実績
4. 英国におけるPEのパフォーマンス測定
5. GIPSで定められているPEのパフォーマンス測定方法
6. 日本におけるPEの評価に関する会計基準
7. 日本におけるパフォーマンス測定の課題
8. まとめ

1) はじめに

日本でも大手企業のカーブアウト案件や事業承継案件においてプライベート・エクイティ(以下「PE」)ファンドの活用が広く認知されてきたことで、現在、PEファンドの投資金額が拡大している。しかし、欧米主要国と比較すると、日本はその経済規模に比してPEファンドの投資規模はまだまだ小さいと言える。
本稿では、PwCグローバル(以下「PwC」)の調査によるPEのグローバル動向を紹介しつつ、従前よりパフォーマンス測定の取組みを実施している英国プライベートエクイティ・ベンチャーキャピタル協会(The British Private Equity and Venture Capital Association、以下「BVCA」)のレポート内容および測定手法を紹介し、日本において同様の取組みを実施する際に課題となりうる事項について概説したい。
第1回目である今回は、世界におけるPE運用資産残高推移の実績と予測、PEのパフォーマンス実績について紹介する。

2) PEの動向

 PwCは、2017年10月に「アセットマネジメント2025 - 資産運用業界における変革への対応」(以下「AWM2025」)という報告書を公表している。
図表1は、AWM2025において分析された、世界の運用資産残高推移の2016年までの実績、および2025年までの予測である。
世界の運用資産残高は現在も成長を続けており、2012年の63.9兆米ドルから、2016年には84.9兆米ドルに達したことが示されている。なかでも、PE運用資産残高は、2012年の6.4兆米ドルから、2016年には10.1兆米ドルまで成長している。
また、PwCでは、現在の金利水準と経済成長が継続することを前提とした場合、世界の運用資産残高は、2020年には111.2兆米ドルに、その後2025年には145兆米ドルに達すると試算している。また、オルタナティブ運用資産残高は、2020年には13.9兆米ドル、2025年には21.1兆米ドルに成長し、2016年から2020年の期間で年平均8.5%、2020年から2025年の期間で8.7%の伸びを示すと予測している。

<図表1>世界の運用資産残高推移の実績・予測
(単位:兆米ドル)

<図表1>世界の運用資産残高推移の実績・予測 (単位:兆米ドル)

オルタナティブ投資の中でも、特にPEと実物資産(インフラストラクチャーおよび不動産を含む)の運用資産は拡大を続けると予測されている。
 図表2は、プロダクト別のオルタナティブ運用資産の推移実績と、今後の推移予測を示している。
オルタナティブ運用資産のうちPEは、2012年から2016年の期間で、3.3兆米ドルから4.7兆米ドルに成長した。
PwCでは、オルタナティブ運用資産残高は2020年には6.4兆米ドル、2025年には10.2兆米ドルへと成長を続け、成長率は、2016年から2020年までの4年間で年7.8%、2020年から2025年までの5年間で年9.8%に上ると予測している。PEファンドは、テクノロジーやエネルギーなどの企業に対して引き続き投資を拡大し、長期投資を通じ、高い専門性を発揮してアルファを高めることで、その価値をさらに高めることが期待されている。

<図表2>世界のプロダクト別オルタナティブ運用資産残高推移の実績・予測
(単位:兆米ドル)

<図表2>世界のプロダクト別オルタナティブ運用資産残高推移の実績・予測  (単位:兆米ドル)

3) PEのパフォーマンス実績

 PwCは、2018年2月に「The rising attractiveness of alternative asset classes for Sovereign Wealth Funds」(以下「SWF報告」)という調査報告書を公表している。
 SWF報告は、世界の政府系ファンド(Sovereign Wealth Funds、SWF)の運用資産残高は、2010年の4.4兆米ドルから2016年の7.4兆米ドルへと年率9.1%で成長し、このうちオルタナティブ資産への配分も19%から24%に増加したと示している。
図表3は、SWF報告における、各アセットクラスの5年、10年、20年のパフォーマンスおよびボラティリティの比較分析である。PEは、他の全てのアセットクラスを5年、10年、20年の期間においてアウトパフォームしており、年率リターンはそれぞれ、13.6%、8.6%、8.6%となっている。
10年および20年について、ボラティリティが上場株式はもとより、不動産よりも低いのが興味深い。もっとも、筆者私見であるが、PE投資について公正価値の評価の精度が上がってきたのは過去10年程度であるため、ボラティリティ測定の精度向上にはもう少し時間がかかるとみている。

<図表3>期間別・運用資産別リターンおよびボラティリティ分析

<図表3>期間別・運用資産別リターンおよびボラティリティ分析

 次回は、PEファンドのパフォーマンス測定において進んだ取組みを行っている英国の事例を中心に、PEファンドのパフォーマンス測定に関するグローバルの状況を概説する。

***
『プライベート・エクイティの動向とパフォーマンス測定』のコラムは計3回の連載となります。

著者プロフィール 
清水 毅(しみず・たけし)
PwCあらた有限責任監査法人パートナー、資産運用インダストリーリーダー

秋山 潤一郎(あきやま・じゅんいちろう)
PwCあらた有限責任監査法人第三金融部(資産運用)シニアマネージャー

清水 毅(しみず・たけし)
PwCあらた有限責任監査法人パートナー、資産運用インダストリーリーダー。
30年以上の間、東京およびニューヨークにおいて、ファンドおよび運用会社を中心とする金融機関に対して、監査およびアドバイザリー業務を提供。日本証券業協会・投資信託協会・日本投資顧問業協会により設置された「資産運用等に関するワーキング・グループ」委員を務める。主たる著書として、「投資信託の計理と決算」(中央経済社・共著)、「不動産投信の会計と税務」(中央経済社・共著)、「集団投資スキームの会計と税務」(中央経済社・共著)等。公認会計士、日本証券アナリスト協会 検定会員。

秋山 潤一郎(あきやま・じゅんいちろう)
PwCあらた有限責任監査法人第三金融部(資産運用)シニアマネージャー。
約20年の間、東京および上海において金融機関、その他幅広い業種の会社に対して、監査およびアドバイザリー業務を提供。プライベート・エクイティ・ファンドおよびその運用会社の監査、ならびにプライベート・エクイティ業界に対するアドバイザリー業務を数多く手がける。公認会計士。

   

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