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第6回 『経営コンサルティング会社から見た事業会社とPEファンドの比較』
(アウトソーシング編)

そして、PEファンドの外注利用における最も特徴的だと感じるところがサプライヤーの選定である。特に影響の大きい業務には、客観的にベストなサプライヤーを選ぶことに多大な労力をかける。
例えば、投資先企業内のある部署で担当している業務があったとしても、その業務を外注した方が効果的な場合は、迷わず外注する傾向にある。そのためにその業務から外れる担当部署の異動も行う。
具体的には過去に以下のような事例があった。あるPEファンドの投資先企業において、ある業務を外注するためにコンサルティング会社の入札を行った。当初提案入札で10社から3社に絞った後、その3社を1社に絞るために実施入札という選定方法を取った。この選定方法は、しっかりと外注先の選定を行う会社であれば、稀にあることである。しかし、実施入札の入札参加者には、コンサルティング会社だけでなく、その業務の担当部署も同じ条件で参加させたのである。その上で、実施入札の結果を元に、担当部署に継続させるか、コンサルティング会社に任せ、部署の人員を削減するかという選定をした。結果として弊社と担当部署で対応することになったが、担当部署のメンバーの半数は他部署への異動となった。
多くの事業会社においては、担当部署を参加させてまで入札するという事例は聞いたことがないし、コンサルティングの提案が阻まれる一番の原因は、コンサルティング対象となる業務の担当部署からの反発でもあるため、PEファンドならではの選定方法と言えるかもしれない。ちなみに数年後、そのPEファンドはイグジットにて大きな成功をおさめた。
もちろんすべてのPEファンドが客観的にベストなサプライヤーを選んでいるわけではないが、このような事例はPEファンド独特のものであると言えるのではないだろうか。

「提案」「選定」が終わり、「契約」に至るとコンサルティングの実行フェーズとなるが、そこでもPEファンドと事業会社において、大きな違いが見られる。

PEファンドが投資している企業は、多くの場合、コンサルティングに必要な情報共有を進めやすい。理由はいろいろだが、一つは投資の検討段階において、対象企業の様々な情報を入手し、整理できていること。また、PEファンドは投資先企業の改善計画(=出口戦略)が、投資先企業全体においてもスケジュール感が共有され、各部署のプロジェクトにおいても、意識的にスケジュール感を持った対応をしてくれることが挙げられる。
一方、事業会社では情報共有の段階で躓くことが多く、経営者や役員がプロジェクトを注視していなければ、契約してから情報共有に2-3ヶ月、長い時では半年くらいかかることもある。事業会社の担当者から資料が出てこない場合には、弊社では必要資料のPDF化やデータ化等も無料でお手伝いしているが、企業によっては社内に入ることができないこともある。
情報共有において一番困ることは、資料が段階的に出てくることである。意図的なものかどうかは不明であるが事業会社にその傾向は強い。そのため、早期に全体像を把握できず、コンサルティング中に新たな資料が出てきた場合に、業務の手戻りが多く発生するため、コンサルティングのパフォーマンス低下に大きく影響する。

情報共有後の実行フェーズにおいては、PEファンドの投資先企業における関連部署の担当者の多くはコンサルティングに対して協力的である。その理由として挙げられるのは株主や経営者が入れ変ったことにより、これまでの価値基準・評価基準の見直しやトップダウン型の経営が実行されているためであると推測される。
一方、事業会社はコンサルティングの実行時においても、関連部署の担当者の多くは非協力的である。以前に非協力的であった担当者にその理由を聞いたところ、今まで自分がしてきたことが否定される等の担当者のプライドによるものや、一気に削減すると来期以降削減実績を出すのが難しくなる、仕事量が増えていくのではないか等の後ろ向きな理由がほとんどであった。中でも私が強く残念な気持ちになるのが担当者のプライドや保身のための妨害だ。

PEファンドは多くの企業に投資し、また少数精鋭でもあることから、事業会社よりも外注の機会が多く、それが投資先の企業の成長性に大きな影響を与える。逆に言えば、外注選定の失敗が投資の失敗に繋がってくる。また、入札や選定も多く経験しているため、サプライヤーやコンサルタントの使い方にも長けている。

著者プロフィール 佐谷 進(さたに すすむ)

株式会社プロレド・パートナーズ 代表パートナー
ジェミニ・コンサルティングを経て、ブーズ・アレン・アンド・ハミルトン株式会社(現プライスウォーターハウスクーパース・ストラテジー株式会社)へ転籍。大手製造業のコストマネジメントおよびリエンジニアリングなどに従事。
その後、不動産投資信託の運用会社であるジャパン・リート・アドバイザーズ株式会社に入社し、住宅、オフィス、商業施設、ホテル、物流物件の取得から運用・コストマネジメントを担当。
2009年に株式会社プロレド・パートナーズを設立し、コスト削減と企業不動産に特化したコンサルティングを提供している。
大阪生まれ大阪育ち。趣味はゲーム全般(ボードゲーム含む)と漫画。
東京藝術大学美術学部卒。

◇主な著書
『体温の伝わる交渉』(ウィズワークス) 2014年

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