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第4回 『プライベート・エクイティ(PE)の付加価値』
~具体的な投資事例を踏まえて~

2. カーライル・グループの実際の投資事例:ソラスト(旧日本医療事務センター)

 

ソラストの概要

ソラスト(旧日本医療事務センター)は、日本初の医療事務教育機関として創業者の新村勝由氏により1965年に設立され、その後医療事務受託のパイオニアとして医療関連受託事業へと事業領域を拡大し、50年近くに亘って医療業界を支援してきた実績を有する。1992年には現在のジャスダックで株式公開を実現し、2002年には東証第二部への上場を果たした。また、1999年には介護事業、2002年には保育事業へと事業領域を拡大し、2014年3月期の連結売上高は約580億円、従業員数は約25,000人に達している。

MBOに至る経緯

ソラストは、2011年9月にカーライル・グループがサポートするMBOを発表し、2012年2月に非上場化することとなったが、その背景事情の一つとして、医療関連受託事業の成長鈍化に伴い事業改革を迫られる事情があった。医療関連受託事業の主な顧客である医療機関の経営は、医療制度改革などの影響により厳しさを増し、医療機関からのコスト削減圧力が高まっており、更に派遣法の解釈の厳格化により、派遣事業の売上高20億円を失う状況にあった。これが当時の株価にも影響し、望まない株主による市場での買い集めのリスクも懸念材料として浮上していた。また、ソラストは、医療関連受託事業が収益の大半を占める中で、先行投資による赤字を伴う介護事業を第二の柱へと成長させることも重要な課題として認識していた。

一方、カーライル・グループとしては、ソラストの医療関連受託事業の潜在的な競争力は高く、カーライル・グループの知見を活用して成長を実現できるものと判断していた。具体的には、米国を含むグローバルな医療マーケットに携わって蓄積してきた知見に基づき、単に医療事務を遂行する人材を提供するだけでなく、医療機関の経営改善に貢献する付加価値の高いサービスを提供することで競合との差別化を実現できるものと考えていた。また、介護事業についても、経営力の強化やM&Aを活用した拡大戦略を実行することにより、成長スピードを加速し、業界でも有数の介護事業者へと発展させることが可能であると判断していた。

このような状況下において、ソラストの創業会長及び経営を引き継いだ荒井社長の求めるニーズと、カーライル・グループの提案内容とが合致し、医療関連受託事業の事業構造を変革し、介護事業を医療関連受託事業に続く事業の柱へと成長させることを目的として、株式の非公開化を伴うMBOの実施の決断に至り、創業家を含む当時の株主の持分をカーライル・グループが引受けることとなった。

投資後の具体的な企業価値向上のために取られたアクション

カーライル・グループによる投資直後に、カーライル・グループのプロフェッショナルとソラストの役職員とが協働で取組む180日プランとして、①福祉事業(介護事業及び保育事業)の強化、②医療関連受託事業の構造改革、③アイ・エム・ビイ・センター(医療関連受託事業を営んでいた当時の子会社)とのシナジー創出、④経営管理機能の強化、⑤資本政策の検討・実施、⑥インセンティブプランの導入、⑦コーポレートブランディングという7つのプロジェクトが立上げられ、速やかに具体的な成果へと結びついていった。

例えば、アイ・エム・ビイ・センターとのシナジー創出プロジェクトの中での議論を通じて、親子会社間のシナジーの創出に留まらず、両社の統合を行うことが合理的であるとの結論が導かれ、2012年10月1日に両社は統合し、営業強化・事務効率化の両面から大きな統合効果が実現された。また、コーポレートブランディングプロジェクトにおける取組みに基づき、介護事業を第二の柱とすることを目指す企業に相応しい社名にするべく、上記統合と同じタイミングで「日本医療事務センター」から「ソラスト」への社名変更を実施し、「ソラスト」ブランドの社内外への浸透に向けたブランディング活動へとつながっている。

2013年から2014年にかけては、ソラストとカーライル・グループの協議に基づき、1年間で主要ポストを担う5名の役員を外部から新規採用し、既存の経営体制が補強された。これらの新しい役員がソラストに新しい風を吹き込み、医療関連受託事業の事業構造の変革、介護事業の成長、経営体制の高度化に向けた取組みを牽引している。

2013年11月には、本社と事業部のコミュニケーションを改善するために、本社を品川へと移転し、複数拠点に分散していた本社と事業部を品川のワンフロアのオフィスへと物理的に統合した。また、品川移転を機に、2014年4月には、人材採用・教育トレーニング・キャリア支援をサポートし、ソラストブランドを発信するキャリアセンターの運営を開始し、25,000人の従業員を支える女性のキャリア支援、働きやすい職場の提供等、時代にマッチした取組みを強化している。

会社の現状と将来の姿

ソラストは、MBOの実施から3年間で事業戦略の高度化、組織体制の強化、経営の効率化を実現し、2014年3月期には、2年間で80%近い増益により当社の歴史上最高益を達成した。企業価値向上に向けた活動は継続中であるが、改革の成果をより確実なものとし、さらに成長を加速させるために、近い将来の再上場という選択肢を視野に入れている。

著者プロフィール 斎藤 玄太(さいとう げんた)

カーライル・グループ ヴァイスプレジデント
西村総合法律事務所(現西村あさひ法律事務所)にて弁護士としてM&Aなどの企業法務に従事
その後海外留学を経て、2006年7月、カーライル・グループに参画
埼玉県生まれ
趣味はゴルフ
東京大学法学部卒
ニューヨーク大学ロースクール法学修士課程修了
インシアード経営大学院修士課程修了(MBA)

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