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第4回 『プライベート・エクイティ(PE)の付加価値』
~具体的な投資事例を踏まえて~

3. PEファンドの付加価値とPE投資市場の将来

今まで述べた事例を参考にしながら、最後にPEファンドが提供する付加価値についてまとめてみたいと思う。

まず挙げられるのは、事業展開力の抜本的な強化である。PEファンドにとっては、ある一定期間内に事業内容を飛躍的に向上させ、成果を出すことによって事業価値を上げることが最大の目的である。従って、投資先の経営陣と一体になって、新たな戦略を考え実行に移し、結果を出すことに全精力を投入する。そのために必要な人材、特に中堅、中小のオーナー企業ではなかなか採用できなかった優秀な人材を採用することによって、今までと全く違うスピードで、事業を変化させていくことができるのである。この人材採用面においては、補強が必要なポジションの特定、候補者プールからの最適な人材の選定だけでなく、そもそも優秀な候補者を引き付けるという点においてもPEファンドには付加価値がある。魅力的なインセンティブプランを設計することで、投資先の既存の人事・報酬体系とバランスを取りながらハイクラスの人材の興味を引くことが可能となる。特に海外においては、実績を有するPEファンドの投資先におけるキャリアを提供すること自体が、日本の中堅企業では通常採用できないようなレベルの経営人材の獲得の実現につながるものと多くのサポート経験の中で感じている。

PEファンドは、今までの投資経験からどのような手段を講じれば会社がより早く成長し、同時に効率的に運営でき、収益性を上げることができるかを知っているのも強みである。マーケティング戦略・ブランディング戦略の改善、生産や物流管理の徹底、効率的な設備投資、ITシステムの導入、事業を管理する経営システムの再構築、徹底など、どの部分に注力すれば会社がもっと良くなっていくか、投資を実行した時点ですでにその青写真を作って、効果的に投資先を支援しているのである。それも、コンサルティングファームのように自らの知見・経験・アドバイスを提供するだけでなく、事業領域・ニーズを踏まえた最適な外部専門リソースの選択、社内の個別事情を理解した上での戦略・施策の適正な方向付け・優先順位付け、構築された戦略実行に向けた迅速な意思決定のサポートなど、外部リソースを有効に活用しながら、企業価値向上施策を推進し、迅速な成果に結びつける点にもPEファンド活用の大きな意義があると考えている。

近年、特にPEファンドの付加価値として重要視されているのは、グローバル展開のサポートである。中堅、中小に関わらず、日本の事業環境を考えると海外事業をいかに伸ばし、成功させるかが極めて重要な経営課題になっている。多くの日本企業はまだ海外事業を成功裏に展開できる人材を持っていない。また、現地の優秀な人材を採用し、その人たちに高いモチベーションをもって働いてもらう経営のノウハウにも欠けているのが現実である。日本国内で成功している人でも、海外に行くと日本での成功体験が却って足をひっぱり失敗をするという例も多くみられる。

多くのPEファンドには、海外で経営の教育を受け、実際に海外事業を成功に導いた経験を有する人が多くいる。また、グローバルに展開しているPEファンドでは、他国にいる投資プロフェッショナルと緊密に連携し、投資先の海外展開を効果的に支援するところも数多くある。これらは、いずれも特に中堅、中小の企業にとっては他で得ることのできない付加価値であり、今まさに事業の成長にとって必要な支援である。

このように、事業展開力の抜本的な強化、海外事業展開の強化などを通じて、企業の価値を上げていると言えるが、その実行において極めて重要なことは、PEファンドと経営陣が同じ目的に向かい一枚岩となって事業展開を推し進めることである。そのために、PEファンドは投資先の経営陣と常に密接に情報交換を実施し、事業展開の方策について議論を行い、スピード感を持った意思決定と実行を促す。時には現場にPEファンドの人間が入って支援を行っていくこともあるし、前にも述べたように鍵となる人材を外部から採用していくことを常に行っている。PEファンドが提供する価値の根源は、最終的にはこの部分にあると考えており、それはいわゆる投資先に対する適切なガバナンスと人材の提供と言ってもよい。

これらのPEファンドの付加価値が実績として現れ、多くの企業にもっと理解されるようになれば、日本でもPE投資はこれから益々増えていくこととなると確信している。

著者プロフィール 斎藤 玄太(さいとう げんた)

カーライル・グループ ヴァイスプレジデント
西村総合法律事務所(現西村あさひ法律事務所)にて弁護士としてM&Aなどの企業法務に従事
その後海外留学を経て、2006年7月、カーライル・グループに参画
埼玉県生まれ
趣味はゴルフ
東京大学法学部卒
ニューヨーク大学ロースクール法学修士課程修了
インシアード経営大学院修士課程修了(MBA)

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