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第3回 『PEファンド化する機関投資家』

2. 日本市場への波及可能性

日本のPEファンド市場の成熟度、規模からすれば、機関投資家のPEファンド化は、PEファンド運用者の独りよがりな幻想と言われるかもしれない。
しかしながら、私は、日本の機関投資家がファンドに賛同、あるいはそこまで進まなくとも、他の機関投資家と組んで、事業会社に対して事業戦略上の提案を行うような局面は意外に早く、ここ1、2年の内に実現すると期待も込めて見ている。
その背景として、企業統治を巡る一連の改革と、PEファンド案件への意外な慣れとが、車の両輪として働くと考えている。

企業統治を巡る一連の改革

14年2月に策定された日本版スチュワードシップ・コードにより、今後機関投資家は、エンゲージメント(対話)を通じて投資先企業との建設的な関与を深めることを要請されている。そのエンゲージメントを進める中で、投資先企業に何を求めるか、を検討するにあたり、PEファンド的な経営関与の目線・方向性が有力な選択肢に成りうると考える。
一方事業会社側も、現在進められている有識者会議から、早晩提示されるコーポレートガバナンス・コード、“Comply or explain”を規定した改正会社法の成立(14年6月)を受け、低いROEからの脱却を図る具体策の実行を迫られることになる。言われてから久しい「選択と集中」実行に向け、外部環境が整備される中、機関投資家がPEファンド的な提案を行い、事業会社も真摯にその提案に対応する姿は、直ぐそこにきている未来と言える。

PEファンド案件への意外な慣れ

PEファンドの存在感では、欧米と我が国との彼我の差は大きいものの、武田薬品工業、豊田自動織機、三菱ケミカルホールディングス、セブン&アイ・ホールディングスなど日本を代表するブルーチップ企業が、PEファンドが所有する事業会社を買収している。
これら企業は、買収後PEファンド傘下にあった事業会社に対するPEファンドの経営関与について、生々しい痕跡を実地検分しており、その評価は別にして、PEファンド的な経営関与に対する慣れは出来つつあると思われる。
これらの「慣れ」があるとすれば、前述の企業統治を巡る改革の展開も相まって、PEファンド的な経営関与を皮膚感覚的に把握する事業会社が増えることで、こんどは機関投資家からPEファンド的な指摘があったとしても、一方的に防御に回るのではなく、それら指摘を逆に活用しようとする位の柔軟性が事業会社側に生じてもおかしくはない。

私は、80年代から日系企業が関わるM&Aアドバイザー業務に関与したが、M&Aという手法は、80年代初頭までは、一部の異端経営者が行う、あるいは、救済局面で使われる「特殊な経営手法」程度の認知しか得られていなかった。それが、主に対外進出の手段として、海外企業買収を実行する過程で、いつの間にかM&Aは、経営者の好き嫌いや、得手不得手に関わらず企業経営手段の「経常的な経営手法」として、日本の企業風土に定着した。私は同様なことが、PEファンドの投資活動にも拡がるとの期待感を持っている。

これらの動きを単純化過ぎるかもしれないが、イラスト化してみた。
(画像をクリックすると大きくなります)

現状 - 今後期待される動き

勿論我が国で、機関投資家の方々が投資先企業との関係においてPEファンド的な動きをするには、PEファンド案件が規模、件数両面で一層拡大する必要があるし、何よりも我々PEファンド運用者が、日本の風土の中でその認知度を高め、理解者、支援者を増やす日々の努力と実践を怠らないことを肝に銘じることが必須であると考えている。

著者プロフィール 深沢 英昭(ふかざわ ひであき)

東京海上キャピタル(株)取締役社長
日本長期信用銀行(現新生銀行)にて、M&Aアドバイザリー業務に従事。
日本興業銀行(現みずほ銀行)に転職後、興銀、みずほ証券で、本邦系企業の事業ポートフォリオ再構築を支援。
2004年4月、東京海上キャピタルに参画し、2005年6月より取締役社長。
静岡県生まれ。
PPI(Pacific Pension Institute)メンバー
趣味はテニスと野球観戦(高校野球&埼玉西武ライオンズ)
東京大学経済学部卒
シカゴ大学経営大学院修士課程修了(MBA)

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