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第2回 『PEファンドで働く人々』

慎 泰俊 「起業家」

2014年9月12日

日本にはそもそもPEファンドが欧米ほど多くなく、規模も小さいため、どのような人々が働いているのかイメージがつかない人も多いと思われる。そこで、第二回となる本コラムでは、PEファンドで働く人々に必要とされる素養や、働いている人々の生活について書いてみたい。

また、本稿を書くにあたっては、業界ベテランとなる方々の意見のみならず、ファンドに転職したての若手や中堅層の意見も多くヒアリングさせて頂いている。本稿が、PEファンドの人びとと仕事をしている方や、ファンドでのキャリアを考えている方にとって参考になれば幸いだ。

なぜPEで働くのか

そもそも、彼ら彼女らがどのようなモチベーションを持ちながらPEで働いているのか、という点について書いておこう。インタビューを通じて見えてきた、人びとの働く動機(特に若手)は、やり甲斐とライフ・ワーク・バランスの二つに集約できるように思う。

やり甲斐がある

第一回で述べたように、PE投資は金融と実業の複合実務ともいえる投資形態で、ファンドが成果を出すことができれば、それは事業の成長に大きく貢献することができる。「事業が成長すれば、株主のみならず投資先の経営陣や従業員、取引先などがハッピーになる。金融の仕事でそういったことに関われるのはPE以外にあまりない」と、ある若手投資プロフェッショナルは話していた。
 
もちろん、事業の成長に貢献するあるいは関与するということであれば、戦略コンサルティングファームで働くことによっても可能であるものの、経営権を取得して事業に関与するPEはより深く長期間に亘って会社に関与することができる。ある戦略コンサル出身者はこういう。

「コンサル時代、会社がどうするべきであるかについて、夜も寝ずに分析を続け提案をした。今も自分はその提案は妥当だったと思っているが、それが実施されるかどうかはクライアントである企業の意向次第で、歯がゆさを感じていた。ならば自分でもっと深く関わることができる仕事がしたいと思い、PEに入った。経営権を有している株主であればなんでも出来るというのは勘違いだということは分かったが、少なくともより深く対象企業の経営に関与することはできていると感じているので、キャリア選択は誤りでなかったと考えている。」

また、個人的な感想も述べると、ファンドの多くが少人数でチームを組んでいるため、比較的若手のうちから大きな裁量を持って仕事をすることができるというのも、大きなやり甲斐だった。例えば、三人である投資案件を追いかける際には、若手一人がデューディリジェンスを主担当、もう一人の若手がファイナンスのための銀行担当、一人の中堅(もしくはシニア)が全体統括といった具合にチーム分けをするが、担当者となった若手らは、弁護士や会計士らをはじめとした専門家との協議をほとんど一人で受け持って仕事を進めていく。どうしても一人では決められないことは上司に相談する、といった具合だ。

大きな組織では、こういった動き方をすることは少なく、何重にもレポーティングラインが存在し、一人で決められることが少ないのに対し、若いうちからこういった自律的な仕事ができるのは、とてもやり甲斐のある経験だったといえる。

裁量の大きさによるライフ・ワーク・バランス

また、やり甲斐とある程度関連しているが、PEファンドでの仕事では自分の裁量で時間管理をすることができるので、結果的にライフ・ワーク・バランスを保ちやすいということもある。

PEの仕事では、担当者一人ひとりが仕事に関して有している裁量が大きい。それは場合によっては仕事を一緒にするアドバイザーやコンサルタントよりも長い時間働き続けることにつながるが、一方で、ある程度自分の時間をとりやすいという側面もある。

いつ投資案件が佳境に差し掛かるかは分からないので年間の休暇のスケジュールを立てにくくはあるが、それでも毎日自己の裁量を持たず仕事に追われるようなものに比べるとライフ・ワーク・バランスがとれているといえる。実際に、周囲を見ていても、趣味や家族との時間を持つことが出来ている人が多い。

収入は最大の理由ではない

一つ強調しておきたいのは、PEファンドで働く多くの若手にとって、収入は第一の理由ではないということだ。これは日本のPEの特徴でもあるが、収入だけに関していえば、他にもよい選択肢はある。ある大手PEファンドの会長は「若くて仕事ができてお金稼ぎをしたいのであればPEに来ないほうがよい」とまで話していた。それにもかかわらずファンドで働くのは、上記に述べたようなやり甲斐や裁量の大きさによるものであると筆者は考えている。

著者プロフィール 慎 泰俊(しん・てじゅん)

五常・アンド・カンパニー 代表取締役
モルガン・スタンレー・キャピタルおよびユニゾン・キャピタルを経て現職。2007年にNPO法人のLiving in Peaceを設立し、カンボジアやベトナムなどで日本初の「マイクロファイナンス貧困削減投資ファンド」を企画するとともに、国内児童養護施設の支援を実施。Global Shapers(世界経済フォーラム)などに選出。囲碁六段、本州縦断1,648kmマラソン完走。東京生まれ東京育ち。朝鮮大学校政治経済学部法律学科卒、早稲田大学大学院ファイナンス研究科修了。

◇主な著書
『15歳からのファイナンス理論入門』(ダイヤモンド社) 2009年
『ソーシャルファイナンス革命』(技術評論社) 2012年
『外資系金融のExcel作成術』(東洋経済新報社) 2014年

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